ばらかもんコミックス1巻のレビュー/感想
非常に優しい雰囲気の漫画です。
のんびりした島の風景で都会で廃れた青年が
癒されていくという王道パターンに乗りながらも、
その癒しをうまく絡み合わせて、
主人公である清舟の成長へと繋げていっています。
清舟の「基本を極める」という姿勢は賞を取るにおいて、
決して間違ったものではありません。
しかし、それだけでは人の心を動かせません。
よくある都会アンチ物語ならば、
真っ向から清舟の生き方を否定して田舎万歳と書ききるのですが、
この「ばらかもん」は清舟の良い部分は伸ばして、
悪い部分ははっきりと自覚させていく、
というスタンスを取っているように感じました。
中でも小学生や中学生に普通に気を使われているところなど、
大人が読めば心にぐさっとくるようなシーンでしょう。
なるの子供としての純粋さと、清舟のプライドの塊としての純粋さは似て異なるものです。
しかし、どちらも純粋であるという言葉によってまとめられてしまいます。
この二つを上手く融合させて、
「人」というものの良い面を探しだせていけるような物語となっています。
そしてこの純粋さを上手く使って、シリアスとコメディーをバランスよく分けて、
漫画というものの面白さをより一層引き出しています。
島の特徴である子供か老人しか住民がいない、というイメージを利用し、
上手く主人公である清舟と対等な同世代が全くいない状況を作り出しているなど、
随所で細かな物語としての演出が見られ、のんびりとした風景の裏で、
非常に考えられて作られていると感じます。